九州三菱自動車販売株式会社 就職
~得意分野を見出し、活用する~ 発達障害Yさんの場合
※三菱GTOのイラストはYさんの直筆です。
大学生のころ
Yさんはこどものころ、発達障害と診断されています。大学で情報工学を専攻。パソコンが得意で、車が大好きです。一方、発達障害があるため、コミュニケーションや、初めてのことにどう対応するのか、見通しをたてることが苦手といった特性があります。Yさんは大学時代、ひきこもりがちになっていた時期がありました。ゲームに没頭し、プレイヤーによるコミュニティでは、対航空機戦でそこそこの強さを持つプレイヤーとして認知されていたそうです。本当の強者と手合わせをし、渡り合ったことは、今でもYさんの誇りです。しかし、Yさんは、ゲームのコミュニティで活躍している自信をもってしても、就職に対する不安をぬぐえずにいたといいます。就職して、会社に合わせるようになると、自分が自分ではなくなるような気もして、「働きたくないな」と思っていました。Yさんを心配した、大学の進路指導の先生や、家族が、就職のサポートを受けることをすすめ、あゆむを利用することになったのです。
就職までに7か所の職場で実習
あゆむでは、就職までにいろんな業種の職種で職場実習を行い(1回は2週間程度)、適した職場に納得して就職することを大切にしています。Yさんは自身でも「実習で、得意分野を見出し、活用する」という方針をたてました。1か所目の職場実習は、自動車用品店で、接客を含む、商品出しを行いました。大好きな自動車にかかわる仕事で、商品と場所を覚えるのは得意でしたが、お客様対応やトラブルをさけるための判断に対する苦手さが見えました。2か所目に行った、物流センターの実習では、正確さとスピードで、突出した力を発揮されました。また、パソコンが得意でしたので、事務系の仕事も数社経験しました。データ入力などの定型的な仕事は正確性を発揮しますが、臨機応変な対応が多い事務作業だと苦戦することもわかりました。
実習を積み重ねた結果から、あゆむのスタッフがYさんに向く職場の開拓を行い、就職できそうな職場3か所で実習を行いました。その結果、官公庁の事務職の採用試験に合格、もう一方で実習を行った自動車部品のピッキングの仕事の2社の内定を勝ち取りました。自分にとってどちらが良いのか考え、Yさんは、大好きな車にかかわる、九州三菱自動車販売(株)への就職を決めることができたのです。大学時代、自分でどう就職活動をしていいかわからず、自分に向いている仕事もわからなかったYさんの、大きな成長でした。
部品の管理はピカイチ!
九州三菱自動車販売で、Yさんは自動車の修理に必要な様々な部品の在庫管理と受発注を担当しています。最初は、部品のピッキングから覚えましたが、現在では修理工場から部品の注文を受け、県外の工場へ部品を発注するなど、受注業務に関わる電話対応も行います。Yさんの上司は、「Yさんはもともと車が好きで、部品にも関心が高く、システムで管理できない特殊な部品の欠品にもいち早く気づいて対応してくれる、今では彼がいなければ困るぐらい」と言います。記憶力が人並みはずれてよいYさんの強みを存分に生かして仕事をしています。一方で、部品管理の仕事に慣れると、他の仕事も覚える必要がありました。しかし、模索している間はうまくいかず、上司と衝突したり、がんこになったりし、気持ちに余裕がない日々もありました。あゆむのスタッフは、職場訪問し、かたくなになりすぎてしまうYさんの気持ちを、なんとかほぐす支援をしていました。
苦手なことにもチャレンジ!
そんなYさんと関わっていた上司の方は、頑固な彼に手をやくこともありましたが、「しっかりYさんと話して、向き合う」と決め、任せる仕事を増やしていきました。Yさんがパソコンが得意なことに着目し、営業部が展示会で使うPOPづくりを任せ、展示会にも参加させるようにしました。また、修理工場へ部品の納品に行くときには、彼も同伴させるなど、三菱自動車販売のお客様と接する仕事へ、徐々に仕事内容を広げていったのです。
Yさんは発達障害があるため、コミュニケーションが苦手です。展示会用にお客様にアピールできるPOPを作るためには、営業担当者の意見を聞いたり、お客様の立場にたって考えることが必要です。上司の方はよく、彼にアドバイスをしているそうです。「自分だけで完結せず、他の人の意見を聞いたり、お客様がどう感じるか考えて仕事をしなさい」と。これは、発達障害の特性が強いYさんは苦手なところです。今でも、その都度アドバイスが必要ですが、最初に比べるとずいぶんよくなり、最近では展示会で直接お客様と話すことにもチャレンジしています。難しいこともあるので、そばに上司がついてはいますが、できるだけYさんに接客してもらっているとのこと。上手にしゃべれなくても、車にとても詳しく、勉強していて、一生懸命説明しようとするYさんの姿勢を、高く評価しているとのことでした。得意なパソコンや部品管理を軸に徐々に活躍の場面が増えてきたYさん。最近では、会社の方にパソコンを教えたり、部品部の方との飲み会にも参加するなど、職場の方とのコミュニケーションも幅が広がってきています。